容疑者Xの献身（原作編）

ネタバレ感想です。
原作と映画は美しい対照だと思いました。

好き嫌いは確かにあるんだと思いますが。

支離滅裂ですがよろしければ続きからどうぞ。

最初にどちらから触れたか、と言うのは重要ですね。

自分はどちらかと言えば原作偏重主義者なのですが、最近はそうでもないかと。

例えばのだめカンタービレ（ドラマ）や精霊の守り人（アニメ）、大地の子（ドラマ）等は原作も映像もそれぞれ違うメディアだからこそ描けた世界を感じました。

要は作り手の意志を感じられるか、というところにかかっているのではないかと。

『容疑者Xの献身』も同じ印象を受けました。
まだ暫く打ちのめされた感触は残ってたのに原作読んだから、またきましたね。
ずーんと。

ガリレオと呼ばれる程の天才・湯川。
彼が唯一天才と認めた嘗ての同期・石神。
本来なら研究を続けている筈が、数学教師の道を進まざるを得なかった石神と、準教授として一見栄達の道を歩む湯川。
原作で描かれる二人の対比は露骨な程でした。

石神の花岡母子への想いは花岡靖子への感情を中心に語られ、花岡靖子も彼が自分に恋情を寄せているのではないかと薄々気付きながらも、一方でその感情は恐怖の色合いを強めていく。
石神が彼女に対して抱く気持ちの描写も、そのように一見変質していくように見える。
その描写が巧みで否応なくひきこまれました。
変人・湯川が何故関わったのか。
彼にとっても『共通言語』で話せる無二の友人を失いたくない、という友情。
しかしその反面で彼の難題に向かう悦びも実はあって、それ自体に実は自己嫌悪の感情を抱いたのではないか、と感じました。

花岡靖子の女としての工藤への想いは、彼女にとって恋愛感情というより女としての防衛本能が生み出した逃避感情だったのではないか？

でももし、石神の用意したアリバイが完成していたら、彼は彼女と工藤が結ばれるのを見届けてから、身を引いたかもしれない。
原作では石神は完全に湯川をライバルとして、彼に対して最後まで感情を見せませんでしたが、だからこそ最後の慟哭で湯川にもその感情は伝わったのだろう。
石神の望み通り花岡母子が工藤の手を取っていたら、それはなかった。
娘が学校で命を絶とうとしたのは、石神の余りにも重すぎる望みに耐えられなかったのと、母への離別も込められていたのではないか、
彼女は石神のあの手紙を読み、彼の意志に限りなく近づいたからこそ、命を絶とうとしたのかな、と。

石神に対して余りにも存在感が大きくなりすぎて、殉教者のようになろうとしたのではないか＿＿。

勝手な妄想ですが。

純粋に相手を想い、だからこそ誰も救われないラスト。

せめて時が少しでも癒やしてくれるよう、
取り返しのない過ちも、
それによって生まれた傷も。

いつか少しでも癒されることを祈らずにいられませんでした。

でも結局、ここまで自分がはまったのは湯川や草薙や、花岡靖子より石神の願いに引きずられていたからですね。
愛する存在はあっても、ここまで深く想いをかけることは出来ない。
そこまで何かを純粋にただ愛し、それに殉じようとまで出来るのが羨ましかったのだと思いました。

でも犯罪は正当化出来ない。ましてや人の、それも無関係な命を奪うことは赦されない。
仮に法で裁かれなくても自分の命が知ってるからどうしようもない。ならばやはり湯川によって彼らが罪を自覚しようとしたのは＿＿良かったのだ、とそう自分で結論付けようと思えました。

長々と乱文お付き合いくださり有難うございました。

明日からがんばろー！